大正4年(1915) 口径6.3cm 高2.5cm
玉屋製 13代鍋島直泰夫人紀久子所用
ボンボニエールとはフランス語で、「砂糖菓子を入れる小箱」を意味する。ヨーロッパの習慣が近代日本に取り入れられたもので、皇族や華族の間で宴席を催した際に金平糖などの砂糖菓子を入れる引き出物として用いられた。
写真のボンボニエールは唐鏡のひとつで、円鏡の周囲を八枚の花弁状に縁どった八稜鏡をかたどっている。鏡中央の鈕に相当する部分に金の菊紋を配し、瓔珞をくわえて向かい合う一対の鳳凰と瑞雲をあらわす。箱底面には格挟間をもうけた台を取り付け、いっそう格式高いものにしている。この伝統的な格式高い意匠のボンボニエールは、大正4年(1915)に京都御所で執り行われた大正天皇即位式の節に用いられたものである。
鍋島家には同型のものが3点伝来しており、ひとつは朝香宮鳩彦王・允子妃殿下が拝領し、その後、第一王女紀久子(13代鍋島直泰夫人)へ譲られたものと考えられ、二つは11代鍋島直大・栄子夫妻が拝領したものと考えられる。鍋島家には現在、金属製(銀・鉄・錫・七宝)や木製漆塗など、全146点のボンボニエールが現存しており、これらは鍋島家と皇族家・華族家との縁の広がりをあらわしている。
鍋島家に伝来した146点のボンボニエールのうち、拝領した契機が明らかなものや意匠のすぐれたものなど、選りすぐりの57点を、第60回展「鍋島家の雛祭りと極小のこものたち」(平成25年2月16日(土)~3月31日(日))でご紹介しました。