10代佐賀藩主 鍋島直正筆
明治3年(1870)(直正 57歳)
1幅 紙本墨書 竪106.0cm 横60.0cm
10代佐賀藩主・鍋島直正(1814~71/号 閑叟)が、明治3年(1870)3月( 落款「庚午暮春」)に書した作品。明治4年正月に没する10ヵ月前の作である。終画をくねらせる「新」字、突き上げる「遊」字、擦れて再度筆を押し込む「門」字など、擦れながらも先端まで神経が行き届いている。擦れと、たっぷりとした墨付きが対照的なアクセントとなって躍動する本作品は、亡くなる前年とは思えぬ閑叟の気魄を感じさせる。
本詩は、慶応2年(1866)3月に閑叟自身が詠んだもの(「十可山房集」)。現在の4月頃にあたるこの時節を、「澗上花零新緑柔(渓谷上の花が零れ落ちて新緑の色がまだ柔らかい)」と詠んでいる。「作浴泉遊(浴泉の遊びを作さん)」(2行目)とあるが、春暖に誘われた閑叟はこの年の3月~4月にかけて2週間ほど塚崎(武雄温泉)に滞在している。
澗上花零新緑柔。春衣好作浴泉遊。孔門碌々三千子。点也当年第一流。
庚午暮春。悾庵。
関防印「竹外桃華」 落款印「鍋島閑叟 字閑叟 号閑叟」・「一号悾菴」
本品は、10代藩主鍋島直正公 生誕200年記念「鍋島閑叟の書」展(平成25年10月28日~12月21日)に出品しています。