1巻(14通) 鍋島直正 書 安政2年(1855)頃
(題書)縦17.0cm 横10.5cm 紙本墨書 巻子装
三巻の巻子に仕立てられた、鍋島直正の側近のひとり徳永傳之助関係の書簡群が残されている。箱書きにより明治期に徳永家より鍋島家に献上されたものと見られる。
そのうち一巻は鍋島直正が「極密」として側近の徳永傳之助に宛てた直筆の書簡14通から成る。巻頭の4通ほどはいずれも安政2年(1855)頃のものと見られ、蒸気軍艦入手についての具体的な指示が記されている。長崎でオランダ船に乗船し「来年蒸気船を長崎にもたらすよう約束を取り付けようとしたところ、実は幕府の蒸気船(観光丸)よりも良いものをもたらすと、思いのほかすぐによい返事をもらえた」と、オランダ人との交渉の手応えを伝えている。また対幕府については、「萬一、願書御差し返し相成り候共、押し返し候ても相願い候様取り計い度候」、つまり蒸気船入手の願書をもし突き返されても、押し返してでもお願いするようにと指示している。長崎警備のための蒸気船入手への直正の意志が藩士にも強い対応を求める指示に表れている。
本品は「蒸気軍艦を入手せよ!! ―江戸後期の長崎警備」展(平成27年7月6日~9月12日)に出品します。