くろうるしぬりうたいばんぐみまきえはながみだい
江戸時代(19世紀)/木製 漆塗 蒔絵
竪18cm 横26.4cm 高さ23.2cm
10代藩主鍋島直正の長女で川越松平家へ嫁いだ貢姫(みつひめ/1839年~1918年)所用の鼻紙台。鼻紙台とは懐紙や楊枝など手回りの小物を整理して入れるためのもの。中段の棚を扇面の形につくり、側面には欄干や御簾を取り付けて寝殿風にするという、瀟洒で技巧を凝らしたつくりである。
台全体を蒔絵で装飾しているが、ここに表されているのは能楽のモチーフである。主人公を描かずにゆかりの品々で文様を表す留守文様(るすもよう)という手法で、たとえば天板に表される「手箱・鈴・中啓」で『三番叟(さんばそう)』を、「牡丹花・赤頭」で『石橋(しゃっきょう)』を、という具合に数多くの能の物語を暗示している。
この資料は辰年新春企画「初春を祝う」展(2012年1月4日[水] ~ 1月31日[火])で展示しました。