ねむのきかわせみのず
1幅 鍋島禎子筆 明治時代後期~昭和時代初期
縦58.2cm 横32.3cm 絹本着色 掛幅装
6月~7月頃に刷毛状の花を咲かせる合歓木(ねむのき)が水面を覆う清涼感のある水辺の景。枝の上から水面下の川魚に鋭くねらいを定める翡翠の赤い嘴と、全身にまとった瑠璃色の羽が目に鮮やか。
落款にある「梅崖女史」は12代鍋島直映(なおみつ)夫人禎子(ていこ)の号。直映とともに禎子は、花鳥画を得意とした荒木寛友に師事し日本画を学んだ。画面左下にかけて細く長く垂れ下がる一枝が小さく揺れた時、川魚を捕えた翡翠が瞬時に画幅から消え去る。そんな次の瞬間が目に浮かぶような、張り詰めた一瞬を合歓木の花の薄桃色など柔らかい色調でまとめた夏の一幅からは、婦女の嗜みの域を超えた画技を感じさせる。
本品は「侯爵鍋島家と東京」展(平成28年5月23日~7月23日)に出品しています。