篳篥「秋風」(筒共)
ひちりき めいあきかぜ
木製黒漆塗の筒には正面上部に「秋」、背面に「風」との銘を入れ、秋風になびく梶の葉を金蒔絵であらわす。芦舌、世目、露通し添え。露通し(唾とり)の棒は珍しい鼈甲製。 「松印様お手なれ」との添書により、直大が愛用した品であることが分かる。鍋島家の雅楽器は、篳篥のほかに龍笛や笙など24点が現存しているが、その大半は「唐衣」と「寿」の銘を持つ黒漆塗長方箱に二分して納められていた。これらは10代直正から長女貢姫へ、その後貢姫から弟である11代直大へ譲られ、直大夫人栄子により昭和6年に整理されている。