さんじゅうろっかせんえ
3代佐賀藩主鍋島綱茂筆 江戸時代(17世紀後半~18世紀初頭) 1帖 折本装
(画)絹本着色 縦22.0cm 横17.1cm (和歌)彩箋墨書 縦21.1cm 横18.2cm
優れた歌人三十六人を絵姿と詠歌で表した三十六歌仙絵。一人ずつ、片帖に姿を描き、片帖にその詠歌を書す。一人おきに左右に分けられた歌合せの形式となっている。三十六歌仙絵の人物構成は一定ではないが、本作品は後鳥羽院御製に始まり、前中納言定家・後鳥羽院宮内卿・参議雅経・能因法師と続くもので、藤原公任撰三十六歌仙、中古三十六歌仙や新三十六歌仙とも異なっている。
筆者の3代佐賀藩主鍋島綱茂(1652~1706)は若年から絵筆を握っており、「綱茂公御年譜」によると14歳にあたる寛文5年(1665)には綱茂筆の達磨図一幅を家老鍋島清長(姉川鍋島家)が拝領している。本作品の制作年代は未詳だが、二十数点が知られる作例のうち掛幅装でないものはこれが唯一で、表紙には唐花唐草文様の金襴緞子を用い、四隅には唐草をあしらった隅金具を嵌めるなど凝った装丁となっている。
本作品は、鍋島家歴代による菩提寺高傳寺への寄附物を安政2年(1855)に整理した「高傳寺御寄附物帳」に記載される「玄梁院様(綱茂)御筆御歌仙 一折」にあたり、綱茂の弟で4代藩主を継いだ吉茂による寄附とされている(大正14年、鍋島家に返納)。なお、明治44年(1911)、鍋島直大に宛てられた佐賀県知事不破彦麿の書状が添えられており、本作品は久留米大演習時に天覧に供されたことがわかる。
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(参考文献)福井尚寿「絵を書く藩主 ―佐賀藩三代鍋島綱茂の場合」『佐賀県立博物館・美術館調査研究書』第31集、佐賀県博物館・美術館、平成19年
本品は「元禄の殿様 ―文人大名 鍋島綱茂」展(2020年8月24日~10月31日)にて公開予定です。
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