あさぎろじぎょうようもんつきはなふねもようひとえ
瀧村(10代鍋島直正側室)所用 江戸時代後期
織り目の透ける絽の、浅葱色の涼やかな夏物の小袖。地に模様を染抜き、橙や紫、金などの刺繍と鹿の子絞りで、舟に見立てた藤や菊、牡丹の花々が波間に漂う様子を表す。袖(前後)と背の5カ所に鍋島本家の筋杏葉紋を配した五つ紋の礼装。
所用者の瀧村(1824~1892)は、家老・鍋島茂郷(姉川鍋島家)の娘であり、10代藩主鍋島直正公の側室で11代直大公の生母。正室は江戸の佐賀藩邸に住まう一方で、側室である瀧村は佐賀城の奥を束ねる「国御前」と呼ばれた。京都にて病に伏す直正公は看病のため瀧村を呼び寄せるなど、信頼の厚い人物であった。また、明治時代には東京に移り、直大公の家族とともに生活した。
これまで瀧村所用品や単身の肖像写真は知られていなかったが、本年(2020年)、御子孫家よりご寄贈いただき、「愛娘への手紙」展(2020年11月24日~2021年1月23日)にて初公開の運びとなった。
瀧村肖像写真