次郎左衛門雛
じろうざえもんびな
源氏物語絵巻の登場人物のような引目鈎鼻風の容貌と団子のような丸顔が特徴的なこの人形は次郎左衛門雛。男雛は黒袍と袴をつけた衣冠束帯姿、女雛は五衣に華やかな唐衣、裳をまとい、緋袴を着けている。次郎左衛門雛は京都の人形師で幕府御用を務めた雛屋次郎左衛門が創始したといわれ、18世紀後半の江戸でもてはやされた。公家や上級の武家の間では流行と関わりなく雛の本流として長く重んじられたという。この人形は11代鍋島直大が明治40年(1907)に新調したもの。この年は直大61歳であり、還暦のお祝いという意味合いがあったのだろうか。男性が雛人形を持つこともあった貴重な例といえる。なおこの時、栄子夫人もお揃いで新調している(写真右)。