葦田に鶴蒔絵書棚
あしだにつるまきえしょだな
葦の生い茂る水辺に鶴が憩い、あるいは空を群れ遊ぶさまが表された本桑製の書棚。桑の木目を生かした漆地に、群生する葦や畦道に沿う水流を金銀の蒔絵で描いており、落ち着いた重厚な色調のなかで鶴の頭頂部に注された朱漆が効いている。
書棚は書物や巻物などの文房具を飾るための棚。手箱や香道具を飾る厨子棚、化粧道具を飾る黒棚とセットで三棚と呼ばれ、江戸時代には武家の婚礼調度の中心的なものとされた。本品の袋戸の引手金具には朝香宮家の家紋、両扉の掛け金具には菊花が彫り表されており、昭和6年に朝香宮家から13代鍋島直泰に嫁いだ紀久子女王の婚礼に際し特別にあつらえたものとわかる。