黒地群蝶模様留袖
くろじぐんちょうもようとめそで
13代鍋島直泰夫人紀久子所用の留袖。黒縮緬地に鍋島家の家紋である杏葉の五つ紋を配し、裾から上方へ色鮮やかな異国の蝶が群舞する様子を繊細な染と刺繍であらわす。直泰は熱心な蝶の収集・研究家でもあり、紀久子夫人をともない各地へ蝶の採集に出かけている。恐らくは標本や図鑑を目の前にして、直泰自ら細かい注文をつけながら描かせたものと考えられる。裾の内側(八掛)にまで様々な蝶が舞い、染めによる正確な色合いと刺繍を加えて立体感を出す技法には目を見張るものがある。紅絹の胴裏がつき袖丈もやや長めで、昭和前期の作と思われる。