城のある風景
しろのあるふうけい
川辺に二人の人物を配し、船の浮かぶ川向こうには建物が並び遠景には城郭がそびえる。中景から遠景に重なり合う工場や城郭からなる建物群は遠近感が明瞭でなく、水面に映る陰影も固く形式的な処理にとどまっている。作者の百武兼行は明治7年(1874)8月、11代鍋島直大・胤子夫妻に同行しイギリスへ再渡欧した。彼が洋画を本格的に学び始めたのはその翌年のことで、胤子夫人のお相手役として風景画家リチャードソンに師事した。本図左下には「Y.Hiaktake 1876」とあり、年記のあるものでは最も早い時期の作品のひとつである。