吉野山図屏風
よしのやまずびょうぶ
銀箔が変色して黒ずんだ背景に、銀雲を画面の上下に部分的に配し、山塊をあらわす緑青に、山間に配されまさに散り始めようとする満開の桜が一際目に鮮やかに映える。大胆にして平明な表現だが、山のたたずまいは平板な塗りに見えてその実、微妙な変化を加えて自然らしい量感があり、群生する桜の配置も要領よく、桜の花びら一枚一枚が丁寧に胡粉で仕上げられ、繊細な技量が窺える。桜の根元の処理は桃山的で銀雲の縁に下地として胡粉を敷くのも古風な手法である。落款はなく作者は不明であるが、大和絵の手法に練達した画人が想定される。