黒漆塗裏白南天譲葉蒔絵食籠
くろうるしぬり うらじろなんてんゆずりはまきえじきろう
食籠は中に食べ物を収める容器で、贈答用品や座敷の棚飾りにも用いる。佐賀藩主鍋島家に伝来したもので、高さ・口径ともに40cmを超え、大名家の調度にふさわしい大型の食器である。器表は黒漆塗、内側は朱漆塗で、全体に裏白・南天・譲葉の模様を金や青金の平蒔絵で表し、南天の実には朱漆を用いている。葉裏が白い常緑の裏白や、新葉が成長してから古い葉が落ちる譲葉は、お正月の鏡餅飾りにも用いられ、長寿長命や潔白、家系の永続などおめでたい意味を持つ。また、南天はせき止めの薬や染料の原料として重宝されるが、江戸時代には「難転」とも書かれ、難を転じるという縁起のよい意味を持つ。これらの模様が大胆に散らされた、吉祥性に満ちた食籠である。