有職雛(直衣姿)
ゆうそくびな(のうしすがた)
11代鍋島直大夫人栄子が40代の頃に誂えたと考えられる人形。有職雛とは実際の公家の装束を忠実に写したもので、おもに公家社会や大名家で飾られ、近代以降も上層階級に好まれた。この有職雛は、男雛が白地袍に紫袴で公家の平常着ともいえる直衣姿、女雛が白地小袖に緋袴、紅地袿をつけた袿袴姿。箱の商標から、由緒ある東京の人形店、永徳齋の作ということが分かる。初代永徳齋(明治41年没)は、江戸時代に将軍家や大名家に雛人形を納めていた雛屋次郎左衛門の養子となり家を継いだ。しかし徳川幕府の崩壊とともに幕府御用の職を失ったため、維新後は本姓に復し、のちに永徳齋と名乗ったという。以後は天皇家を中心に宮内省の御用品を作り、高級品を扱った。鍋島家には他にも永徳齋作の人形が伝来する。